Honor Killing - 名誉の殺人
Honor killing - 「名誉の殺人」とは、婚前外交渉を行った、あるいは婚前外交渉を行ったと疑わしき女性を『家の名誉を傷つけた』として殺害することである。多くの場合女性は、親兄弟など親族の男性の手によって殺害される。
「名誉の殺人」は古くから見られる風習であり、現代でもイラク・トルコ・インド・パキスタンの一部地域で行われている。中近東で多く報告されているのでイスラムの風習と誤解されがちがだが、宗教よりも部族社会に根ざしているものだと考えられている。
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2011年、一本の動画がインターネットにアップされた。動画にはヒジャブを被り床に座った女性四人と、男性二人が映る。やがて四人の女性は手を叩きながら歌を歌い、一人の男性がそれに合わせて踊る様子が映されていた。後にこの動画は、パキスタンのコヒスタン州内の村で結婚式の際に撮られたものだということが分かった。また、二人の男性は兄弟であった。
そして動画に映っていた女性全員が「名誉の殺人」により殺害されたということが明らかになった。また女性側の親族の一名、そして報復として男性側の兄弟三名も殺害されていた。
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コヒスタン州を含むパキスタンの郊外、特に山岳地帯では、今なお国の定めた法律よりも村の伝統が重んじられている。特筆すべきなのはジルガ (Jirga) と呼ばれる会議であり、ジルガが開かれるとその地域を構成する部族の族長や年長者たちが集まり、村の伝統や風習に沿った裁定を下し人々はそれに従う。
コヒスタン州でも、動画が広まってからまもなくジルガが開かれた。そして女性たちと男性たちは異なる部族の出身であり、異なる部族の異性が集まることは許されざることである、と結論付けられた。彼女たちは自らの家族の名誉を汚したとして、ジルガのリーダーは彼女らを殺害するよう命じたとされている。
当初コヒスタン州管轄の検察官はこの事件を否定し、彼女たちは殺されずに生きていると主張した。しかしこれに異を唱え、2012年、動画に映っていた男性二人の兄であるアフザル・コヒスタニ氏 (Afzal Kohistani) はイスラマバードの最高裁判所へと出向き、女性たちが殺害されたことは明らかであり、村中のすべての人がこの事件を知っているのになぜ正当な裁判がなされないのかと問いかけた。だが最高裁判所にアフザル氏の訴えは届かなかった。
最高裁判所に退けられたアフザル氏はこの事件を深く調査し、報復として殺害された自身の兄弟たちは、動画の女性らと同じ部族の者によって手をかけられたことを突き止める。アフザル氏は彼らに対し公平な裁判を下すよう裁判所に再び働きかけた。パキスタンにおいて、「名誉の殺人」における加害者に、法の裁きを求めることは異例の事態であった。「名誉の殺人」はパキスタン国内においてほとんどの場合黙認されている。
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この事件がアフザル氏の活動によって明るみに出された事により、2016年に女性たちの生死を確認するための調査団が人権活動家たちにより発足された。調査団はコヒスタン州で動画に映っている本人だという女性を紹介されたが、事前に入手していた顔写真と風貌などが異なると判断し、動画の女性たちはすでに殺されていることを確信する。
またパキスタンで人権活動家およびジャーナリストとして活動しているハシーブ氏 (Haseeb Khawaja) は『彼女たちは一ヶ月間監禁されて拷問を受けつづけ、生きたまま燃やされた』と主張する。
事件が公になってから6年後の2018年、ようやく調査団により八名の男が女性たちの殺害に関わった疑いでリストアップされた。しかしこの八名のうち、殺害された女性の実の兄である一人以外は無罪とされ、さらに残ったこの一人も裁判所に報告される10日前に自殺していたことが判明する。また殺害された女性は三名で、残りの二名は未だ存命とも報告されていた。
これらを虚偽の報告だとして異議を唱えたアフザル氏は、すべてを明るみに出すまで活動を続けると宣言した。
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翌年、さらなる追求のため同国内のアボッターバード州へと訪れていたアフザル氏は、州内の警察署で数時間に渡る激しい暴行を受ける。その数週間後、同じくアボッターバード州内で銃撃に襲われ、アフザル氏は命を落とした。
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ジルガによる殺害の命令が下ったあと、アフザル氏は自分の家族と兄弟たちに被害が及ばぬよう彼らをコヒスタン州外へと避難させていた。
アフザル氏が殺害されてから数ヶ月後、彼の弟であり、事件の発端となったビデオに映っていた男性のうちの一人、 グル・ナザール氏 (Gul Nazar) の逮捕が命じられた。
グル氏の義姉であり、アフザル氏の妻に当たる女性と関係を持ったとされる男性を殺害した容疑だった。
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Al Jazeera:
How a Pakistani whistle-blower was killed for 'honour' | Asia | Al Jazeera
BBC:
Afzal Kohistani: Calls for justice after 'honour killing' activist's murder - BBC News
Scroll.in:
How a 2012 viral video of young people singing in Pakistan set off a chain of gruesome murders
AFP:
結婚式を異性と祝い…女性招待客の名誉殺人で父兄に終身刑 パキスタン 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
Dawn:
Dawn | Slain Afzal Kohistani's brother booked for killing man
(※情報が非常に錯綜しており、報道機関により主張の異なる箇所が見られます。このページはAl JazeeraおよびBBCの記事を主な参照元としています。)
ケンタッキーフライドチキン
マレーシアのケンタッキーはうまい。
マレーシアにはマレー系・中華系・インド系と人種も宗教もバラバラな民族が混じって暮らしてる。マレー系はムスリムなので豚が食べられない、インド系は多くがヒンドゥー教徒なので牛が食べられない(そもそも肉を食べないベジタリアンもいる)、そうなると誰でも食べられる鶏肉が必然的に肉の王になる。
そして鶏肉料理の中でも最もポピュラーなものがフライドチキンであることは想像に難くないだろう。
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マレーシアでフライドチキンを食べようと思ったらいつでもどこでも食べることができる。駅の周りにはフライドチキン屋台が必ずある。24時間休み知らずで営業してるインド系のカレー屋の店先では大抵大きな鍋でフライドチキンを揚げている。マレーシアで朝ご飯としてよく食べられているナシレマにフライドチキンを追加することも出来る。中華系の野外フードコートでも確実にフライドチキンの屋台が出店している。
このフライドチキンも東南アジアらしく色々なスパイスを加えた(多分)衣で揚げているので、これがまた食欲をたまらなくそそる香ばしい匂いを出して人を引きつける。
ちなみにコンビニでは売っていない。揚げたてをどこでも買えるからだろう。
そんなフライドチキンはファーストフード業界でも猛威を振るっている。
日本でケンタッキーフライドチキンと言うとあまりファーストフード的イメージが無い人が多いのではないだろうか。確かにファーストフードだがマクドナルドと比べたら店舗数も多くはない・値段も張るイメージがあるので、「ファーストフード食べに行こうかな」「じゃあケンタ行く?」となる人たちはおそらく少数だろう。
だがマレーシアではそんな事はない。まず店舗数が異常に多い。ショッピングモールには必ずと言っていい程出店している。街を歩けば独立店舗が見つかる。ケンタッキーとピザハットが合体した巨大店舗も存在する。その隣のショッピングモールに別のケンタッキーチェーンが出店している事もある。
マレーシアでのマクドナルドの店舗数が約300店なのに対してケンタッキーは600店もあり、名実ともにマレーシアのNo.1ファーストフードチェーンとして君臨しているのだ。
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このケンタッキーフライドチキンがめちゃくちゃ旨い。
世界規模のチェーンだから日本で食べてもマレーシアで食べても同じだろうと思う人もいるだろう。全然違う。日本のケンタッキーも旨い、マレーシアのケンタッキーはもっと旨い。
僕は一時期ケンタッキーにハマってしまい、一週間のうちほぼ3日はケンタッキーを食べるという生活を送っていたこともある。
マレーシアのケンタッキーは二種類の味付けからチキンを選べる。いわゆるノーマルタイプのものは、日本で食べるものに似た味付けのチキンでオリジナルと呼ばれる。もう一つがスパイシーと呼ばれ、その名前の通りスパイシーな味付けがなされたものだ。僕は断然このスパイシーが好みで、ケンタッキーには数え切れないほど通ったがオリジナル味を頼んだことは殆ど無い。
日本のケンタッキーフライドチキンは1口目こそパリッとしているが、衣が薄いため食べ進めていくとどちらかというとネッチョリとか、モッチリというかそういう質感だと思う(これはこれで美味しい)。それに比べてマレーシアのケンタッキーフライドチキンは衣が分厚く、パリッと、サクッとしている。オリジナルは日本のものに近いと上で書いたが、このオリジナルも日本のものと比べるとパリパリしている。そしてスパイシーだとなぜだか知らないが、もはやバリバリと言っていい程もっとパリパリサクサクしているのだ。
日本だとタブーであると囁かれている「部位選び」もマレーシアでは可能である。なんならレジのすぐ後ろに揚げたチキンが見えるので、指でさしてあれにしてよと部位選びとは言わずダイレクトにチキンを指名することも出来る。そういう事がまかり通っている。
上の画像に見えるソースはチリソースだ。甘辛い味でこれもまた旨い。僕はケチャップやチリソースはポテトにしか使わないが、マレーシア人はケチャップが大好きなのでフライドチキンにもケチャップを付けまくって食べる。ソース類はセルフサービスなので好きなだけ取ることが出来る。チキンを乗せるべきである紙箱を店員から余分に受け取り、その中に並々ケチャップを注ぐという異常事態もマレーシアでは頻繁に見られる。そういう事がまかり通っているのだ。
ちなみにサイドメニューとして人気なのがチージィ・ウェッジ(Cheesy Wedge)というもので、太めにカットして揚げたウェッジポテトに二種類のチーズをかけた代物だ。これもめちゃくちゃ旨いのだが、デブの源みたいな味に危険を感じ僕はあまり食べなかった。
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世界規模No.1ファーストフードチェーンのマクドナルドももちろんローカライズを怠ってはいない。マレーシアのマクドナルドにもフライドチキンがあるのだ。こちらも屋台やケンタッキーとは違う味付けで旨い。ただ衣のせいなのか、重量感がすごいので僕はマクドナルドのフライドチキンを食べると胃もたれしてしまう。
関係ないがマレーシアのマクドナルドにポークバーガーなど豚肉系のメニューはもちろん存在しない。
ちなみにフィリピンに旅行した際にそちらでもケンタッキーを食べてみたが、残念ながらイマイチだった。マレーシアのパリサクタイプではなく日本に近いネトモチタイプで、マレーシアはおろか日本のものより衣の味付けが薄い気がした。
フィリピンでは豚肉のほうが鶏肉よりもポピュラーであるという事、そしてファーストフード業界ではジョリビーが圧倒的なシェアを握っていることがフィリピン国内でケンタッキーがいまいち伸びきれない原因なのかもしれない。
あとお米文化だからといってフライドチキンのセットにも白米がついてくるのはどうかと思う。
マレーシアのケンタッキーにも米とフライドチキンのセットがあるのだが、こちらの米は海南チキンライスのように鳥のだし汁で炊いたご飯なのでとても美味しい。
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僕もそうだったが、海外まで来て日本でも食べれるチェーン店に行くってどうなの?と思う人はたくさんいるだろう。でも行ってみれば意外と味付けが違っていたり、聞いたこともないメニューがあったりと楽しい発見が必ずあるので是非行ってみてほしい。
マレーシアのケンタッキーは旨い。